魔弾
ルピは魔法が使えない。
魔法とは"精神"で撃ち出すもの。
"集中力"や"想像力"、"創造力"…これらの力がエネルギーを生成する。
そのエネルギーが"魔力"だ。
つまり、その力が欠如しているルピには魔法は無理。


「はぁ……
……はぁぁ…」
この世の終わりのような溜息をつく。

「どんだけ溜息つくのよ!」

俺がこんな溜息をつく理由。
転送魔法を使う場合、相手が少しでも魔法の心得があれば、簡単に魔法の補助をする事が出来る。

だが相手が魔法を操れない場合は。

「よいしょっと。」

ルピの体を抱え上げる。

彼女自身の真紅の髪よりさらに紅く真っ赤になるルピ。

「突然そんな事したら、ほら、えと…
心の準備が…」

蚊の鳴くような声でつぶやく。

そう、相手が魔力を使えない場合は。
相手の体に触れて自分の体と同時に転送させるしかない。

で、ルピがいつもリクエストするのがお姫様抱っこってわけだ。
だから別に突然って訳でも無ければ、初めてやるって訳でも無い。


「行くぞ?」

「………うん。」
リクエストした癖にいざこの状況になると毎回ルピは顔を真っ赤にする。

俺としても一刻早くこの状態から抜け出したいわけで。
転送先で厄介な事になりませんように。
切実にそう願い魔法を発動する。

「転送。」



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