Only One



智愛ちゃんが倒れた先に見えたのは――スタンガン。


『うるせぇんだよ、ハイエナが。』

「ッ――や…っ」

『やっと…俺たちだけだよ、芹那?』

「や…っ来ないで!」


私の大嫌いな笑顔を張り付けて、木下は私に近づいてくる。

ヤダ…っ


『なぁ、取引しないか。』

「・・・え?」


とり、ひき…?

いきなり、木下はそんなことを言ってきた。


『芹那がおとなしく俺のモノになれば、アイツはちゃんと返してあげるよ?』

「――っ!!」


私が、この人のモノになれば…?

郁人さんを、解放してくれる…??


『もうこの兄妹には手を出さないとも約束する。』

「っ…!!!」


私さえ、犠牲になれば、郁人さんたちは――…っ

不覚にも、私は甘い汁に手を伸ばした。



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