規則の守護者
「高井さん。

あれで、よかったんでしょうか。


あの人の話聞いてたら、なんだか僕、分からなくなって。

違反って、なくならないんでしょうか。

だとしたら、僕達って、一体何をしているんでしょうか」


違反の犠牲者をなくしたくて、だから違反を取り締まる、監視者になった。

犠牲はなくならないのか。
自分の行為は無意味なのか。

瑞緒は、ただ、つぶやいた。


「あなたは、彼を撃たなかった。

あなたの回収したその銃も、もう人を傷付けることはない。

そのおかげで救われる人は、大勢いるはずよ」


飲み込もうとした涙が、茜の目からすべり落ちる。


……自分は先輩を、助けられたのだろうか。



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