空の君へ〜命をみつめた真実のラブストーリー〜
1限は古典の授業。
開始15分ほどで由美の頭は揺れ始めた。
確かに……、活用形の呪文のような言葉は眠気を誘う。
そして、眠気とたたかう古典の授業は過ぎていった。
2限、3限の授業もすぎ、4限の生物の授業もやっと終わる。
あたしと由美は学食を食べに食堂へと向かった。
「あ~。やっとお昼だね」
「あたしももう、ペコペコだよ……」
「今日はラーメン食べようかな?」
「今日はって……由美はいつも日替わりラーメンじゃない?」
食堂についても人は少ない。
親が作ってくれるお弁当を教室で食べる人が多いから、食堂に人が少ないのも納得できる。
あたしは、ほぼ毎日、学食かパン。
「陽~。なに食う?」
「あー…俺はいい。なんか菊池が弁当くれたし」
少し離れたところから、男の子たちの会話が聞こえてきた。
いつも、女の子たちからお弁当をもらっている人気者。
男女問わずいつも人が周りにたくさんいる男の子なんだけど
あたしは顔をを見たことがない。
「絢! 早く食べよ!」
「え? うん」
なぜか急に由美が焦り出した。
あたしは由美に言われるまま急いで食べ、あたしたちは食堂をあとにする。
由美らしくない……。
なんか、動揺して焦っている感じがした……。
教室に戻ってくると、そこではお弁当をもらう人気者の話題でもちきりだった。
「今日食堂にいたね!」
「いた! お弁当食べてたね!」
「しかも、今日のお弁当箱はピンク! 菊池さんが作っていったみたい」
「今度私も作っていこうかな~」
そんな女の子たちの会話。
由美の表情は読み取れず、何を思っているのかわからなかった。
「由美?」
「ご、ごめん。絢」
「ぼーっとしてどうしたの?」
「ちょっと考え事しちゃった!」
「そっか」
由美と親しくなってから知ったこと。
努力家で、手先は男っぽく無器用。美人さんなのに……笑うと、かわいい。
でも、まだまだ由美のことはあまり知らない。
それでも学校生活も少し長くなると、
由美との仲もじょじょに深まっていった。