空の君へ〜命をみつめた真実のラブストーリー〜


1限は古典の授業。
開始15分ほどで由美の頭は揺れ始めた。


確かに……、活用形の呪文のような言葉は眠気を誘う。

そして、眠気とたたかう古典の授業は過ぎていった。



2限、3限の授業もすぎ、4限の生物の授業もやっと終わる。

あたしと由美は学食を食べに食堂へと向かった。







「あ~。やっとお昼だね」


「あたしももう、ペコペコだよ……」


「今日はラーメン食べようかな?」


「今日はって……由美はいつも日替わりラーメンじゃない?」







食堂についても人は少ない。
親が作ってくれるお弁当を教室で食べる人が多いから、食堂に人が少ないのも納得できる。


あたしは、ほぼ毎日、学食かパン。







「陽~。なに食う?」


「あー…俺はいい。なんか菊池が弁当くれたし」







少し離れたところから、男の子たちの会話が聞こえてきた。

いつも、女の子たちからお弁当をもらっている人気者。
男女問わずいつも人が周りにたくさんいる男の子なんだけど


あたしは顔をを見たことがない。








「絢! 早く食べよ!」


「え? うん」







なぜか急に由美が焦り出した。
あたしは由美に言われるまま急いで食べ、あたしたちは食堂をあとにする。



由美らしくない……。
なんか、動揺して焦っている感じがした……。



教室に戻ってくると、そこではお弁当をもらう人気者の話題でもちきりだった。






「今日食堂にいたね!」


「いた! お弁当食べてたね!」


「しかも、今日のお弁当箱はピンク! 菊池さんが作っていったみたい」


「今度私も作っていこうかな~」







そんな女の子たちの会話。
由美の表情は読み取れず、何を思っているのかわからなかった。








「由美?」


「ご、ごめん。絢」


「ぼーっとしてどうしたの?」


「ちょっと考え事しちゃった!」


「そっか」








由美と親しくなってから知ったこと。

努力家で、手先は男っぽく無器用。美人さんなのに……笑うと、かわいい。


でも、まだまだ由美のことはあまり知らない。


それでも学校生活も少し長くなると、
由美との仲もじょじょに深まっていった。







< 9 / 253 >

この作品をシェア

pagetop