子猫が初恋提供します。
そんな夜を知らないあたしは少し驚いた。
あたしの前に現れる夜は…いつもにこにこ楽しそうに笑っているから…。
確かにファンの人達を恐ろしいほど無視しているのには、こっちの方が焦った気持ちになるほどだったけど。
「…だから余計よね。」
「……へ?」
思わず考え込んでいたあたしを蓮は溜め息混じりに見た。
「なにアホ面してんのよ。
だから余計にあんたの存在が面白くないんでしょってことよ!
誰にも何にも!興味をもたなかった《孤高の王子様》が、…あんたにベタ惚れなんだから。」
「べ……っ!?」
ストレートな蓮の言葉に一気に顔が赤くなった。
だけど自分の足元を見てしゅう…とそれが引いていく。
ベタ惚れかどうかは置いておいて…
「とにかく、気をつけなさいよ?あんな陰険な奴らなんだから…いつ呼び出しなんかくらうことか…」
「うん…。」
釘を刺す蓮に素直にうなずく。
なんにせよ
出逢っただけで女の子を虜にする…そんな夜の噂話はあながち噂だけではないんだと、あたしは身を持って実感中ってことだ…。