神の森

「紫乃、着替えをお願いします。

 それから、こちらの紅茶の染みは取れるかしら」

 薫子は、美和子のスカートの染みを指した。


「紫乃にお任せくださいませ。

 お嬢さま、こちらにお着替えくださいませ。

 ブラウスとスカートは明日までに綺麗にいたします」

 紫乃は、優しく微笑み、衝立の後ろに美和子を案内した。

 紫乃の染み抜きの腕は、確かだった。 


「ありがとうございます」

 美和子は、衝立の後ろで渡されたワンピースに着替える。

 微かに甘い香りがした。

 香りを嗅ぐと美和子は、自分の率直な行動が恥ずかしくなってきた。


「祐里さんのワンピースがよくお似合いでございますわ。

 美和子さん、着替えたお洋服は紫乃に渡してくださいね。

 それから、紫乃、お食事をお願いします」


「はい、奥さま」


 美和子は、紫乃に頭を下げてブラウスとスカートを渡した。


 いつも鮮やかな濃い色の洋服を着る美和子は、祐里の淡い若葉色の

ワンピースに違和感を抱きつつも、何故だか攻撃的で才女を気取る

自分が優しい気分になっているのに驚いていた。


(洋服は、持ち主の雰囲気に纏った者を染めるのかしら)


 美和子は、創業記念パーティで二度ほどみかけた祐里の慎ましやかな

美しさを思い出していた。

 控えめでありながら薫子の優雅さに劣らず、自ずと祐里の周りには

人が集まっていた。

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