神の森

 優祐は、社(やしろ)の中で、見えない蜘蛛の糸に捕らえられていた。

 昨夜から祐里が行方知れずになっていたので、

探しに出ようと扉に手をかけた瞬間、見えない蜘蛛の糸に絡まれて

動けなくなってしまった。

 もがけばもがくほどに蜘蛛の糸は、優祐を捕らえて離さなかった。

 仕方なく優祐は、社(やしろ)で祐里の無事を祈っていた。

 祈りながら、懐かしい気配が近付いてくるのを感じていた。

「祐雫、ぼくはここだよ。

 父上さまもご一緒なのですね。

 父上さま、母上さまをお守りください」

 優祐は、こころの中で懸命に祈りながら声援を送った。

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