誰よりも愛する君へ
「寒い?」

「ちょっと。でもアタシ丈夫な子やで平気やよ」

アタシはそういって笑った。

「無理せんでええよ。ハルは女の子なんやし。これ着な」

優斗はそういって自分のジャンバーをアタシに着せた。

「ええって、優斗寒いやろ。我慢しんといて」

アタシは優斗が着せてくれたコートに手をかけた。

「ハルは優し過ぎる。たまには男に甘えろよ!」

「ごめんな。ほんとありがとな」

「気にすんな。さぁ、帰るぞ」

優斗はそういってエレベーターに乗り込んだ。アタシは優斗のちょっと後を追った。

「家はどこ?」

「近くだよ。歩いて20分くらいかな。」

「近かねぇーだろ。送ってくよ。原チャでいい?」

「歩いて帰るって」

「だ・か・ら、ハル。気ぃーつうなよ」

「・・・うん。ごめんね」

「いいって!」

優斗はそういって自転車置き場にある自分の原チャを持ちに行った。

「後、狭いけど」

「ありがと」

「ヘルしっかりして、ちゃんと俺につかまっとり!」
「う・・うん」

ブーン

優斗の原チャが勢いよく走り出す。
アタシは優斗の大きな背中に抱き着いた。

優斗の温もりが優しく伝わる。

優斗の鼓動が優しく伝わる。

ほんと短い間だけだけどアタシは優斗の優しさに酔いしれていた。

優斗がアタシの家の前で止まるとアタシは夢から叩き起こされた気分になった。
「優斗、ありがと。わざわざ家まで送ってくれて」

「別にいいって!じゃあな」

「バイバイ!」

「あぁ、バイバイ!」
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