誰よりも愛する君へ
アタシは家の前で優斗に手を振ろうとした。
ふと感じた、微かに鼻に触れた優斗の香り。

「あっ、優斗!待って!」
ヘルメットの紐を締めながら振り返るった。

「ん?」

「コートありがと!」

「あぁ、別に今度でいいよ」

「ううん。出かける時いるでしょ」

「うーん、ありがと」

アタシはそういってコートを優斗に渡した。

わずかに触れる指先。

アタシの鼓動が少しだけ早くなる。

「優斗、アドレスとか聞いていい?」

「あ、うん」

アドレスを交換する間アタシの鼓動はまた、早くなった。

「じゃあね」

「あぁ、じゃあな。早く寝ろよ!」

アタシは携帯を胸に抱きしめながら優斗の後姿が見えなくなるまで空いてる右手で手を振った。



その日は優斗に言われた通りにすぐにベッドに入った。


優斗の温もりが消えないうちに。
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