誰よりも愛する君へ
アタシ達はキャーキャー言って笑いながら廊下を歩いた。


優斗に会えなくなってアタシの夏休み計画は丸潰れだった。

週末に捺くんの仕事が休みの日だけ会いに行く。

そんな生活が何日か続いたある日。

アタシはいつものように病院に行った帰りのことだった。

「大倉さん!星野さんのことだけど、面会の許可が下りたから。いつでも自由に来て下さい」

「ほんとですか!?」

「ええ」

看護師さんは爽やかに微笑むとそっとアタシに耳打ちした。

「よかったわね」

って。




<命日>

その日、アタシは朝から大忙しだった。

「ハルー早くしなさい。おいてくわよ!」

「待ってー!」

「だから早く寝なさいって言ったでしょ!!」

「ごめんなさーい」

今日はお父さんの命日。

家族みんなでお墓参りが毎年の決まり事。

アタシは軽く化粧をすると勢いよく玄関を飛び出した。

家の前にあるお兄ちゃんの車。

「相変わらずハルは朝早いのは苦手やな」

「だって、やることいっぱいあるもん!」

「何やってんだか」

「もういい加減にして欲しいわ」

お母さんが素早く車に乗りながら言った。
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