誰よりも愛する君へ
ゆっくりと車が走り出す。

「ってか、ハル化粧変わった?」

お姉ちゃんが怪しい笑みを浮かべながら問い掛ける。

「少しだけ」

「彼氏でも出来たか?」

今度はお兄ちゃん。

「そうなのよ。近頃、帰りが遅いし、ご飯も二杯しか食べないし・・・・」

「ヤバイんじゃない?子供でも出来たか?」

「まぁ、連れ込んでヤッてるよりマシじゃない?」

お兄ちゃんとお姉ちゃんの会話に動揺してお母さんが鞄を落とした。

「もうーお兄ちゃんもお姉ちゃんもやめてー!!」

「ハハッ。まぁ、いつでもええから家連れて来いよ。そん時は帰って来るから」

「そうそう。でも子供出来る前に来てよ!」

車の中での会話は尽きることがなかった。

お墓に着くとみんなでお参りした。





帰り道---------

「お父さんが亡くなって大分経つわね」

お母さんが車の中でボソっと呟いた。

「せやから俺、医者になったんやし!」

「そやよ、私だって医者になろうと思ってるんやし」

車の中に流れる沈黙。

「あっ!お兄ちゃん、総合病院で下ろして!」

「おぉ」

「せやけどなんでなん?」

お姉ちゃんが不思議そうに尋ねる。

「ヒミツ!!」
< 91 / 96 >

この作品をシェア

pagetop