奥さんに、片想い



しかも彼の目を見ていると、いつもの素直な目。裏表ないお世辞じゃないって……。だから。

「あ、ありがとう」

 胡麻すっても……。と言ういつもの言葉が何故かでてこなかった。

 それに彼もとっても満足そうな笑み。
 そんな純粋そうな彼だからこそ。千夏は裏表ない素直な青年に言ってもらえて嬉しい反面、心苦しくなるのだ。

「でも。私、酷い女なのよ。性格悪いしね。男の子達を平気で叱りとばす鬼ババだしね」

 言っておかねば。今の自分の姿を見ているだけではわかり得ないことを。この素直で屈託ない彼を傷つけたくないから――。

「俺、落合主任が格好つけずに本気でガミガミ叱りとばしている姿に惚れたんですけど」

 ええっ? 思わぬ言葉が返ってきて、千夏はつい……避けていた彼の顔を直視してしまった。

 やっぱり彼があのにまーっとした邪気のない目を細めた微笑みで千夏を見ている。

「性格悪い奴は自分から性格悪いだなんて言わないっすよ」
「いまはともかく! 本当の私は」
「もしかして、ずっと前のご自分のことを仰っているんですか? どんなことを気に病んでいるのか知りませんが、誰だって二十代の時にはあるんじゃないですか。そういうこと。そんなのもう関係ないでしょ。このとおり、カッコイイ素敵な女性になられたんだから」

 はあ、はあ? なに、そんなに臆面もなくすらすらと『素敵』とか言ってくれちゃうの!? 

 なのに。迂闊にも『もう関係ない』という彼の言葉に、じーんと来てしまった……じゃないの!?



 
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