亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
理性を飛ばし、混乱させる魔術は効かないらしい。
何とかこの怪物の暴走を食い止めたいのだが。

「問題無い。………斬れれば良いんだ。…………防御力は明らかに下がっている……奴もあの出血だ。倒れるのは時間の問題だ……」

―――殺れる。


確信をもったキーツは、父の剣から滴るドロドロの血液を振り払った。

「………アレクセイは後ろから…リストは側面から…。標的の俺は正面から攻める。腕から徐々に頭の方へ斬り込んでいくぞ………」



縫われていたイヨルゴスの避けた口が、咆哮と共に開いていく。

三角に尖った歯が所狭しと並ぶ口内が覗いた。



イヨルゴスは再び、指が欠落した腕を振り翳した。


途端、だいぶ離れたパラサイトの幹から枝が伸び、半身のみのイヨルゴスに絡み付く。

この成樹中の世界樹にとって、例え化け物であろうとも巨大なイヨルゴスは貴重な栄養剤らしい。
逃がすまいと、絡んだ枝はその巨体を本体の方へ引き摺っていく。

千切れた下半身は、既に幹の中に取り込まれており、巨大な真っ赤な幹からは、真っ黒な骨がめり込んでいた。

イヨルゴスは叫びながら、剥がれかかった爪で引っ掻いたり、枝を食いちぎっていく。


(………パラサイトは怪物を、怪物は俺を………か……………成長が続いている内はまだ安全だな………)

どさくさに紛れてこちらまで伸びてくる細い枝を斬り裂き、いつの間にか自分を囲んでいた影の群を一太刀で薙払った。







―――………ローアン…。












彼女は………無事だろうか?
オーウェンも気になる……。


早々にこの化け物を倒して……城に向かわなければ……。




焦燥感が、キーツを駆り立てる。
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