亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
―――つらつらと並んだ、黒光りする古代文字が、眼前に浮かんだ。
―――…音の無い、小規模の爆発が起こった。
小規模といってもまともに食らえば火傷程度では済まない。
咄嗟にローアンは後退したが、爆風にのまれてしまった。
「―――っあ…!?」
軽い身体はいとも容易く吹き飛ばされ、冷たい床に全身を強く打ち付けた。
抱えていた真っ赤なドレスは手元から離れ、爆風に乗って離れた場所に落ちた。
「……………う…」
痛む両腕で床を押し、何とかして起き上がろうとした。
その矢先、手を突いていた目下の床一面に、二重の線で描かれた丸い魔方陣が浮かび上がった。
(―――っ…!)
起き上がらずにそのまま転がり込み、魔方陣から抜け出すや否や、そこは爆発した。
ローアンの足場に、次々と魔方陣が浮かび、間を置かずに爆発していく。
「……………………………ハハハハ…………どうしたローアン。…………………………動きがえらく鈍いぞ…………体力などもう…………残っていないのではないか………?」
楽しそうに笑みを浮かべながら、手を前に翳したり、パチン、と指を鳴らすクライブ。
広い謁見の間の白い壁に、真っ黒な魔方陣の模様が浮かんでは消え、浮かんでは消え、を繰り返していた。
「……………花嫁衣装はいいのか……?」
ニヤリと薄ら笑みを浮かべて指を鳴らした途端、落ちていたドレスの下に、ゆっくりと回転する魔方陣が浮かび上がった。
「―――それは……!」
それは……駄目だ。
消してはならない。
燃やしては、ならない。
床を蹴り、痛みなど無視してローアンは走った。