亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
―――カッ、と薄暗い光が生じると同時に、ローアンはドレスを抱えて魔方陣の傍らに転がり込んだ。


瞬間、爆発が起こった。……間近に伝わる衝撃波。

ドレスを庇う様に向けた背中に、鋭い痛みと熱風が迫った。

負傷を覚悟したローアンはギュッと目を瞑った。











―――…が、衝撃は一向に来ない。






それどころか、フワリとした毛の感触と、心地良い暖かさが、身体を包んだ。

目を開けるとそこには、絹の様な滑らかな黒。
その向こうには、正反対の真っ白な毛並み。



ローアンは唖然と、目の前で自分の盾となっている二匹を見詰めた。

「…………トゥラに………ルア………?…………………お前達…どうして………」

クライブに威嚇しながら立ちはだかるルアは、角の青い玉から光を放ち、爆風を全て消し去っていた。

トゥラはクルリと振り返り、心配そうにローアンに鼻先を押しつけてくる。



「……………聖獣のお出ましか…………………魔獣ライマンと吊るんでいるとは………………面白い犬だな…」


途端、ルアの目の前に、真っ黒な魔方陣が浮かび上がった。

――危ない、と叫ぶ前に、ルアの角の青い玉が光りだす。

黒光りする古代文字の群が、ルアの光に照らされ、淡い白へと変色する。


黒から白へと変わった魔方陣は、爆発が生じる代わりに、そこら中に真っ白な花吹雪を散らせて消えた。


クライブは無表情で、ゆっくりと首を傾げた。


「……………無効化か…………大した魔力だな…………?………だが、芸が無い………」


深い溜め息を吐き、再度指を鳴らすと、クライブの正面に大きな魔方陣が浮かび上がった。

その中央から、オルカが現れた。

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