亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
鋭利な牙が並ぶ避けた口は半分潰れていて、数本の歯が砕けている。
背中から尾にかけて剣による深い傷があり、血が滴っている。…………痛々しい姿だ。
クライブはオルカの背を撫で、じっと傷跡を眺めた。
「………………………だいぶ……やられているな……フフ………キーツに返り討ちにあってどうする………」
「……………キーツ?」
彼の名に、ローアンはいち早く反応した。
彼は今何処にいるのだろうか……?
この獣と戦ったのか?
彼は………大丈夫なのか?
ローアンの心中を読み取ったのか、クライブは冷やかな笑みを向ける。
「………………安心しろ…………殺してはいない。まだ戦場にいるだろうよ。………………………………ただ………………今はどうなっているか……知らないがな………」
今は………と、意味深な言語を吐き、肩を震わせて小さく笑う。
………ゾッとした。
彼の安否が気になる。
今……戦場はどうなっているのだろう?
城内からは、外の音は全く聞こえなかった。この空間だけ…静かなものだ。
「…………心配か……?…………フフ………くたばっているやもしれんぞ………?」
「………」
ローアンはクライブをキッと睨み付けた。
当のクライブはとても楽しそうだ。
……ローアンはドレスを隅に置き、短剣を構えた。
ルアとトゥラもローアンの前に立ち、クライブに向かって唸り声を上げた。
「………………謁見の間へ来たというのに………………私はまだ足止めを……くらうのか………」
「…………すぐに私を…殺さなかったからだ…………………ユリアクロウ……」
「………その通りだな………姫…」