亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
真っ赤な蛍火が舞う。
丘の上は、荒野程の血腥い戦場ではなかったが、それでもやはり、流れる血の臭いは噎せ返る程濃かった。
牙を剥く影と、絡み付いて引き込もうとするパラサイトの枝。
国家騎士団もアレスの使者も争っている暇など無く、この二者の存在に翻弄され、ただただ抗っていた。
そんな丘の上の、城壁の外側。
頭だけ、胴体だけと五体不満足の屍が散乱する物静かな辺り。急斜面になっている小高い崖。
赤土とは異なる濃い赤に染まった分厚い地層がさらけ出された崖の上に、小さな黒煙が音も無く現れた。
それはサァ―…っとすぐに消えていくが、完全に消える前に、そこから黒煙を纏った人間が躍り出てきた。
それはそのまま、身体を地に打ち付け、砂埃を起こしながら急斜面を滑り落ちていったが、途中で短剣を崖に突き刺し、速度を落としながら崖を降りていった。
丘の下に降りるや否や、短剣は手から離れ、そのまま地に伏した。
俯せになった状態で、息をしようと激しく上下する胸部。
その胸には小さな風穴があり、おびただしい量の血が流れ出ていた。
………指先は辛うじで動くものの、身体を起こすことは出来なかった。
………何処に流れつくか分からないし、途中で意識を失って闇に溶けて無くなるかもしれないという危険を承知で“闇溶け”をしたが…………幸いにも、うまくいった様だ。
「……………………………う…………」
全身に走る痛みと、徐々に増す倦怠感。
ベルトークは首を回し、荒野の方へ頭を向けた。
………髪が邪魔だ。
片目のレンズはいつの間にか…ヒビがはいっている。
………………。