亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
………不覚だった。
まさか……影が…。
しかも………この手で殺した亡き姫君の影に…………たった一突きで……致命傷を負わせられるとは…。
(……………慢心……していたか………)
自嘲的な笑みを浮かべながら、ベルトークは今にも遠ざかってしまいそうな意識を、頼り無い指先で掴んでいた。
………血が足りない。
眠気がきたら………もう…駄目だ。
………久しいな……………睡魔など…………何年振りだろうか。
次第に、瞬きの回数が増えていく。
視界も薄暗い。
血溜まりは大きくなる一方で、全身が浸っている状態だった。
死、というもの迎えている自分を……人事の様に見詰めている自分もいて…。
ただ、冷静だった。
つくづく、自分は冷め切っているな、と感じた。
解けかかった緩いウェーブの長い金髪に、生暖かい赤が染み込んでいく。
覚悟なら、当の昔に出来ている。
総隊長の元についてから。
もっと前からかもしれない。
きっと幼い頃から……こうなる事を分かっていたのかもしれない。
………遠い過去など、もう忘れてしまった。
とにかく、私の回りには敵が多かった。
敵しか、いなかった。
………別にそれで良かった。
その方が独りになれるし、低レベルな啀み合いもせずに済むし………他人も自分も、近付かない限り、互いに傷付くこともない。
何かを欲するのも、先を望むのも止めよう。
何にもぶつからず、流されるままに。
しかし自分は……。
いつからだったか。