亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~

………不覚だった。

まさか……影が…。


しかも………この手で殺した亡き姫君の影に…………たった一突きで……致命傷を負わせられるとは…。


(……………慢心……していたか………)

自嘲的な笑みを浮かべながら、ベルトークは今にも遠ざかってしまいそうな意識を、頼り無い指先で掴んでいた。




………血が足りない。


眠気がきたら………もう…駄目だ。


………久しいな……………睡魔など…………何年振りだろうか。







次第に、瞬きの回数が増えていく。


視界も薄暗い。

血溜まりは大きくなる一方で、全身が浸っている状態だった。







死、というもの迎えている自分を……人事の様に見詰めている自分もいて…。

ただ、冷静だった。

つくづく、自分は冷め切っているな、と感じた。



解けかかった緩いウェーブの長い金髪に、生暖かい赤が染み込んでいく。




























覚悟なら、当の昔に出来ている。


総隊長の元についてから。

もっと前からかもしれない。



きっと幼い頃から……こうなる事を分かっていたのかもしれない。





………遠い過去など、もう忘れてしまった。


とにかく、私の回りには敵が多かった。

敵しか、いなかった。
………別にそれで良かった。

その方が独りになれるし、低レベルな啀み合いもせずに済むし………他人も自分も、近付かない限り、互いに傷付くこともない。

何かを欲するのも、先を望むのも止めよう。


何にもぶつからず、流されるままに。





















しかし自分は……。






いつからだったか。


< 1,040 / 1,150 >

この作品をシェア

pagetop