亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
何にも影響されず。
たった一つだけ。
自分で。
………欲しいと、思ったものがあった。
欲しかった。
どうしても、欲しかった。
(―――………?)
フワリと……小さな何かが、舞い降りてきた。
それは、力無く横たわる手の甲にゆっくりと落ちた。
(………花…びら………)
匂い立つ漆黒の、小さな花びら。
よく見ると、辺り一面、真っ黒な花吹雪が舞っていた。
幻想的なその光景を眺めながら、ベルトークは花びらを握り締めた。
すぐ側で、半ば死にかかっていた影が、突然低い悲鳴を上げた。
真っ黒なドロドロの塊の中で映える赤い目玉に、地中から伸びた赤みを帯びた細い枝が、何本も貫通していた。
上空から地を這って近付いてきた太い枝が、激しく痙攣する影に絡み付き、そのまま引き摺っていった。
――荒野の中央には、真っ黒な花をつけた赤い大樹がそびえ立っていた。
太い幹のそこら中から枝が伸び、四方八方に地を這っては、影や屍を己が身体に引き摺り込んでいく。
三大世界樹の一つ、パラサイトは、極めて獰猛な寄生植物である。他二つの世界樹よりも、乱暴な成長をする。
………立派なものだ。
ここまで大きなパラサイトは……見たことが無い。
「……………………………マリア…」
…愚か者め。
“解放”を使うなと………言ったのに。
………死ぬなと、言ったのに。