亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
手前に転がっていた、もはや敵か味方かも区別が付かない屍に、パラサイトの枝が伸びた。
枝は全身にグルグルと巻き付き、蚕の繭の様になった屍は、そのまま幹の方に引き寄せられ、パックリと開いた幹の穴にのまれた。
獲物を探す赤い触手が、ベルトークの側にまで這って来た。
(…………言葉通り…………自分の蒔いた種…だな………)
苦笑いを浮かべながら、ベルトークは血の臭いを嗅ぎ付けて迫り来る自己の産物をじっと見詰めていた。
あれが、私を食らうのか。
そうやって、死ぬのか。
…世界樹の一部になる。
歴史が全て、先祖の屍の上に立ち続けている様に………。
私も………。
赤く細い枝が、シュルシュルと地を這って近付いて来た。
葉を付けた枝の先は、ベルトークの目と鼻の先で止まり、様子を伺っている様だった。
「――…………どうした………食らえばよかろう…………」
一向にベルトークを捕らえようとしない細い枝。
警戒しているのか何なのか。
枝はベルトークの傍らを這い、彼の指先に触れてきた。
固い樹木の、乾いた感触。
しかしその真っ赤な肌は、人肌の様に生暖かかった。
「………………うっ……………!…………っ……」
………瞬間、鋭い痛みが全身を走り抜け、思わず声を漏らした。
………息をするのも苦しい。
………どうやら、この命ももう保たない様だ。
ベルトークは霞みがかった視界の中で、ゆっくりと動く細い枝を、じっと…見詰めた。
「………………マリア………」
小さく、呟いた。