亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
「………………マリア……」
―――彼女は、いつも笑っていた。
――見る度に、同じ笑顔を振り撒いていた。
ただ、それは…違和感があった。
……本物ではない…貼り付けた様な偽の表情であると………。
あの強情な仮面は、剥がれることはないのだろうか。
内に秘めた本心は、一体どんな顔をしているのやら。
助けてやってから一年余り。
そんな小さな興味しか持っていなかった。
ただ、パラサイトの成長だけが気にかかっていて………寄生された人間の方など、実験材料でしかなくて………………名前すら忘れていた。
彼女の笑顔は、はっきり言って嫌いだった。
軍議や訓練以外は、自分は殆ど資料室という名の広い物置部屋にいた。
暇な時は、文字の群れを読んで時間を潰す。調べものもあったし、ちょうど良かった。
本の山、谷と化すこの部屋は、一度も片付けられたことがない。本棚はあるが、中身は床に全て落ちている。
役割を果たしていない高い本棚の上に腰掛け、夜通し読み耽ることもしばしば。
自分しか来客のいないこの部屋。
………そこに…………たまにだが………………彼女が姿を現す。
兵士としてあるまじきことだが………彼女はろくに周囲を確認せず、上司の自分の存在に気付かないままその辺に腰を下ろして読書にかかる。
………なんだこの女、と見下ろしながら、何度も眉をひそめた。
手に取るのはレシピレシピレシピ…。
いや待て、そんな物がここにあるのかとも驚いたが。