亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
引き寄せたかと思えば今度は突き放し、少女は床に倒れ伏した。



ヨロヨロと杖を立てて身体を起こし、少女は再び少年の前で頭を下げた。


……少年はもう彼女から視線を移し、前髪を弄りながら鏡を見ていた。













「………あの魔方陣を消せ。……………忌々しい……」










「……………はい…」
































―――熱い風。


全てを凍て付かせる様な寒々とした冷気の世界で。


………全てを燃やし尽くす烈火の如き風が、骨がむき出しのイヨルゴスの背を舐めた。



自分に振り下ろされた鋭利な斧の刃が、目と鼻の先で寸止めされ………キーツは気が気ではなかった。

玩具の様に何度か吹き飛ばされ、転がされ………全身で息をしながら仰向けの状態で曇った夜空を見つめるしかなく………。

そこで真直ぐに下ろされた斧を見ながら、ああ……終わりか、と覚悟した矢先の事だった。



鉄の臭いか、血の臭いか分からない濃い異臭が鼻を突く。

………イヨルゴスの自慢の斧の刃が……数ミリ先で静止している。
………一刻も早くこの刃から遠ざかりたいが……まだ身体は動かない。





(………?…………何だ…?)




イヨルゴスはピタリと止まったまま、微動だにしない。


ずっとキーツを睨んでいた兜の下の両眼は、どういう訳か……上空を見上げている。





『―――…グルルルル……』

雲と夜気以外何も無い空を見上げながら、イヨルゴスは歯を食いしばって威嚇の様な呻き声を漏らした。

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