亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~


―――その時だった。

















―――イヨルゴスの血で描かれた魔方陣に、紅蓮の炎が宿った。


荒野全体が、火の壁で埋め尽くされた。


……影と屍が散る大地でのそれは、まるで地獄の業火。
突然、メラメラと燃えだした不可解な炎は、青黒いイヨルゴスの血を燃やし、どんどん蒸発させていく。


………横たわる地面から、目障りな黒光りが薄らいでいくのが分かった。





(………動く…!)

あんなに言うことを聞かなかった身体が、嘘の様に軽くなるや否や、キーツは身を捻って斧の下から抜け出した。

イヨルゴスは消えていく魔力を前に咆哮をし続けるばかりで、キーツに気付いていない。


「キーツ様…!」

「総団長!」


イヨルゴスの後ろへ回り込んだ途端、崩れる様に地に手を突いてしまったキーツ。

アレクセイとリストが慌てて駆け寄って来た。



「………大丈夫…だ…………肋骨と………左足をやられた…だけだ…………」

……大丈夫、ではないのだが………まだ、動ける。

………足を折られたのは痛い点だ。
………あの斧の殴打だ。背骨やら首を折っていないだけマシか。


アレクセイに支えられながら、足を引き摺ってキーツはイヨルゴスから離れた。

その後に続きながら、リストは怪物と辺りの状況に目配せした。




「…………どうして急に………火が…………」

何処からともなく現れた炎。ワイオーンが吹いた火にしては強力であるし、こんな一気に広範囲に回る筈がない。




まるで………魔法の様な……。




(………上空から……………魔術痕?…………………………何なんだ……?)

……訳が分からない。
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