亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
しかし、今はその真意を確かめている場合ではない。

この機を逃すまいと、負傷したキーツは怪物から離れた。





イヨルゴスはまだ空に吠え続けている。






唸り声の漏れるむき出しの裂けた口が向く遥か上空で、一瞬だけ、真っ赤な光が漆黒の夜を横切っていった。




















「―――……完了です…」


「―――簡単な作業だったな。………もういい、下がれ」


「―――…………あちらの内紛に……手を貸すなど………宜しかったので…しょうか………」


「………手を貸す?………ああ……そうだな。………ただ…延命をしてやったのさ。…………………あんな魔獣ごときに、支配されてたまるか………」


「………」















「―――あの国も、大地も………全て…………………我が国のものだ」






















黒い蒸気が辺りに漂い、荒野全体が漆黒の霧で覆われていた。

現れた火はいつの間にか消えており、残ったものは何も無い。

小さな篝火が点々とあるだけだ。




ただでさえ暗く、視界が悪いというのに…。
しかし、イヨルゴスの視界も曇ったことは確かだ。
これはこれで幾分楽かもしれない。


「………パラサイトの動きが止まっていますな…。………成長が終わったのでしょうか…」

「かもな………だが油断はするなよ。……何が起きるのか分からないんだからな………」



そう言って、アレクセイの支えから離れた。




―――その途端だった。
















………カッ、と………………頭上で黒い光が瞬いた。







………城の内部からだった。


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