亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
えらがある、その強靭な鎧の様な広い背中に、牙がめり込んだ。
謁見の間の中で物凄い速さで移動し、風に身を変えて姿をくらましたりするオルカ。
その動きを見切ったトゥラが、“闇溶け”で瞬時にオルカの背に回り込み、自分の何倍もある巨体の背中に噛み付いた。
短剣を構えていたローアンに突進しようとしていたオルカは、その不意打ちで、ローアンから逸れてそのまま壁に突っ込んだ。
衝突直前に離れたトゥラに怪我は無い。
半壊した壁の瓦礫の下から、オルカが現れるや否や、トゥラは再びその巨体に噛み付き、爪を立てた。
オルカは高低混じりあった不協和音な悲鳴を上げる。
………床を叩く尾びれが引き千切られた。
「…………随分と頭の良い……よく出来た犬だな…?……………………古代の老獣が……戯れて来る犬に噛まれるとは………情けない………」
クライブは見ているだけで、オルカを助けようとはしない。
むしろ、その様子を見て楽しんでいた。
「………はぁ……はぁ…………っ…はぁ………」
苦しそうに呼吸を繰り返すローアン。
魔術は全て、ルアの白の魔術で無効化している。
つい先程も、クライブは巨大な黒い魔方陣を頭上に出した。
漆黒の稲妻と吹き渡る風。魔方陣を中心に巨大な嵐の塊が現れたが、ルアの魔力によってそれはかき消され、辺りには白い花が舞った。
クライブの魔術は、聖獣ネオマニー一匹の力で、ことごとく消されている。
…………ルアの魔力がどれ程強力なのかが伺える。
「…………魔術は全て………駄目…か。…………………致し方ないな………………身体を動かすしかないのか…」