亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
掴んではいたが、フラフラと横に垂れていたクライブの剣。
その切っ先が大理石の床を削り、火花を散らした。


……ゆっくりと上がる銀の光沢。


その長い刀身を端から端まで眺め、クライブは剣を構えた。



………来る。






身構えるローアンとルア。

………この部屋全体に、ピリピリとした空気が走る。


………クライブは、ゆっくりと歩み寄って来た。



………身体半分が、闇に溶けている。
垂れた前髪からチラチラと覗く虚ろな瞳は………ギラギラとした……しかし曇った光を放っていた。



………ゾッとした。




ただ………一人の人間が歩いて来るだけなのに…………この威圧感は、何なのだろうか…?

この恐怖は……?



「…………フフ…………手が震えているぞ………トウェイン…」

「………っ………私は……………もう…トウェインではない!……………ローアンだ…!」

「……………果たしてそうか…?………お前はどう見ても………トウェインだ………あの頃と変わらない…………弱々しい、小娘のままだ……」

「………違う…」



………トウェインは、もういない。

……この男の後ろをただひたすら……泣きながら………不安になりながら追っていた……………あの頃とは、違う。



「………貴方に従っていた………貴方を追っていた子供は………………もう、いない…!……………トウェインなど……関係無い!!私にも………貴方にも!!」


……クライブの歩みが、ピタリと止まった。


………口元の笑みが一瞬消えたのは…見間違い…だろうか。



「………………………………そうだな。…………お前の言う通り…………あの子供は……質の悪い、幻だ」
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