亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~




彼がニヤリと微笑んだ途端、ルアは低い呻き声を上げた。


突如、角の青い玉が発光した。

光は弧を描いて、波紋の様に幾重にも広がった。



………これは、一度だけ見たことがある。



………一時的に時間を止める、高度な魔術だ。

一瞬にして辺りから音という音が消え去り、静止画の様な光景が広がっていった。

この中で、ローアンとルアだけが動いていた。

クライブは佇んだまま、微動だにしない。




青い光を放ったまま、ルアは正面のクライブに向かって飛び掛かった。
鋭い爪と白い牙が光る。






―――…はっとした。


昔一度だけこの術を使ったあの夜。
全てが止まっていた筈の空間で………この男は…。









(―――この男には、効かない!!)



「―――ルア!!止めろ!!」



ローアンは叫んだ。

その声は、忠実なルアの耳に届いた。…しかし……………ルアと彼の距離は、既に縮まっていた。













その並んだ牙が、彼の肩に食い込む。



直前。



















白く、細い……節くれ立った冷たい手が、真っ白なルアの首を……掴んだ。


「――ルア!?」


………クライブは止まった時間の中で自然に動き………静かに笑みを浮かべていた。

呻き、もがくルアの首を掴んだ宙吊り状態にしたまま………首を傾げる。




「…………私にはその術は効かん。…………………随分とてこずらせてくれたな………………………目障りな犬だ……お前さえいなければ………あとは好きな様に出来るな……」


……スッと、クライブの剣が上がった。




「―――止めろ!」



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