亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
『………姫……危のう御座います……』
『……………消えかかっているとはいえ………………まだ動ける程の力は残っております……』
守人が口々にそう言うが、ローアンはそれを無視してクライブのすぐ目の前に寄った。
「………………その……通りだ……………………噛み付かれても…………文句は……言えんぞ………」
………少し手を伸ばせば、届く所にローアンはいる。
……………今ある力を振り絞って………首を絞める事も、可能だ。
晴れない憎悪の矛先が、目の前にいる。
………さあ、動け。
…………動け。
…………私は……。
今にも消えそうな……クライブの身体。
下半身から徐々に…真っ白な霧状となって消えていた。
光に照らされた半透明な右手が、ピクリと動き……………少しずつ………上がっていく。
ローアンは逃げようともしない。
その手に気付いているのかいないのか。
ただ、苦しげなクライブを涙を流して見詰めているだけだ。
………クライブの手は、ゆっくりと…………ローアンの細い首に伸びていく。
小刻みに震えながら…………。
クライブは顔を上げた。
乱れた長い白髪。
その隙間から覗く光の無い目が、ローアンを捉え、そして。
大きく、見開かれた。