亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
くぐもった声は、とても優しくて。
頬に添えられたその手は、暖かくて。
真直ぐ見てくれる瞳は。
追いかける幼かった私を、振り返ってくれた時の………あの………………優しい………。
優しい。
「―――………あ…………………………………ああ…………」
………優しい。
クライブは涙を浮かべて、静かに笑っていた。
初めて見た………彼の………本当の…。
―――…お母様が、愛した………。
―――。
―――総隊長。
再び、ローアンがわななく口を開いた時。
彼は。
跡形も無く、消えた。
真っ白な………細かい雪の結晶の様に、キラキラと瞬きながら。
消えた。
ユリアクロウは、いなくなった。
目の前で、静かに。