亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
二匹はお互いを気遣い、クンクンと小さな鳴き声を漏らす。


ローアンは二匹の頭をそっと撫でた。
軽く引き寄せ、その暖かい身体に顔をうずめた。


「………ありがとう。…………………良い子だ……」







本当に、良い子達だ。
全力で守ろうとしてくれた………純白と、漆黒の腹心。


………こんなに怪我をして…………痛かっただろうに………苦しかっただろうに…。


………私なんかのために。






………こんな……醜い人間の争い事に……………巻き込んでしまった。


















「―――……終わらせよう………もう…………充分だ………」
















ローアンはその場でゆっくりと立ち上がった。右手には、彼の剣。少しの曇りも無い、研ぎ澄まされた……銀の刀身。

謁見の間を囲む淡い蝋燭の炎が、妖艶な光を生み出す。







乱れた髪を後に追いやり、部屋の奥にある高い玉座の方を見やった。



…気高き緑の玉座。



しかしローアンの瞳は、玉座を中心に映している訳では無かった。




剣を握ったまま、確かな足取りで玉座へ歩を進める。






さっきまでの全身に走る痛みは何だったのかと思う位、身体は驚く程軽く、痛みなど無かった。


切り傷や擦り傷が消えていた。



















ローアンは前を見据えて、歩く。

玉座の目の前にまで来ても歩みは止まらず……遂には通り過ぎた。





そして、玉座の後に来た所で、静かに立ち止まった。















暗がりを見詰める視線の先には。










………血の様な真っ赤な石が、眠っていた。
< 1,081 / 1,150 >

この作品をシェア

pagetop