亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
「―――……?……おい……!……何かおかしいぞ……」
いつの間にか、城を囲んでいたあの透明な壁は消えており、それに気付いた溢れんばかりの影の群が、容赦無く城内への侵入を試みていた。
丘の上で城壁の内外を守っていた兵士達は、その侵入を食い止めるべく仕切りに剣を振り回していたが………いつまで経っても、その行為に終わりが見えない。
影は斬っても貫いても潰しても………蘇ってくる。
鍛え抜かれた身体も、限界が近かった。
………しかし、突然……。
…視界いっぱいに広がる黒々としたヘドロの海が…………呻き声を上げて苦しみ始めたのだ。
獣型の影は痙攣し、元は敵であったり、さっきまで味方だった、死んだ兵士の影達は頭を抱えて天を見据え、絶叫する。
『―――ア゛…アアアアアアアアア……!!』
鼓膜を揺さぶる不協和音。
己の身体を掻きむしり、もがき苦しむ光景はまるで、地獄絵図だ。
「…………!?…………再生…しなくなったぞ…!」
その直後、両断した影は再生せずに、すぐに黒い霧状となって消滅する様になった。
………何が起こったのだろう…?
「………」
出血の酷い、やけに重たい腕と、傷が深い…熱い脇腹を押さえて、ジスカは周囲に目をやる。
囲んでいた影達が………苦しんでいる。小さな影に関しては、そのまま消滅していた。
『―――…呪いの終わり…って訳か………』
ジスカとは対照的に無傷のバレンは、炎を纏った二本の剣を下ろした。