亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
「―――後ろに回ったぞ!!」
「――……中に入れるな!!………くそっ………全部の影が…………集まってきてないか……!?」
飛び掛かってきた獣型の影の赤い目玉を貫き、兵士は目下の荒野に目をやった。
………果てしなく広い戦場を埋め尽くす黒い塊。
徐々に…徐々にだが…………。
……………その群は明らかにこの城へ移動を始めている。
苦しみながら、悶えながら、険しい丘の斜面をズルズルと這ってきている。
国家騎士団もアレスの使者も、両者共影の処理に手一杯で……とっくの昔に、互いに剣を交えるのを止めていた。
………今は争っている暇は無い。
自分達の味方が激減しているのは、この影のせいなのだから。
時折背中合わせになっても、ただ無言。向き合う事無く、敵意は囲む影に向かう。
「………おっさん、邪魔だ!もっと離れろ!!足を食われるぞ!!」
「……………っ……言われなくても分かっている!!」
「うおっ!?誰だ弓を使ってる奴は!!何処狙ってんだ馬鹿野郎!!おい国家騎士団!お前ら指揮とれてんのかよ!!」
「………静かにしろ!!気が散る!!」
「ったくよ―……バラバラじゃねぇか!ジスカ隊長―!!隊長―!!部下の危機ですよ―!!」
開け放たれた厳かな城の扉。
その大きな口を目指して、影達は進んでくる。
「……師団長…!無理です!!………我々だけでは………もう………!」
肩を噛まれ、骨を砕かれたらしい兵士は、途切れ途切れの息で叫んだ。
扉の前を守っている兵士は、もう残り少なかった。
第1師団長は、息を切らしながらも、剣を構える。