亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
「………耐えろ!!………この先には行かせんぞ…。………守って死ねるならば…それでよし………本望だ…!」
頭上から勢いよく下降してきた鳥型の影を避けたが、ベタリとしているくせに刃物の如き切れ味の羽が、額に真横文字の傷を付けていった。
…不覚にも、流れ出た血が両目に入り、思わず目を瞑った。
直前、大きな獣型の影が口を開けて飛び掛かって来るのが見えたのだが。
……一瞬…構えるのが遅れた。
ああ、もう駄目だ。
そう諦めた瞬間。
顔に、ベチャッと影の体液がかかった。
同時に聞こえてくる、醜い小さな悲鳴。
ズシャリと崩れ落ちる音と共に、すぐ隣りに、柔らかな風が吹いた。
こんな血腥い中でも、何処からか現れた花の様な甘い香りが、鼻孔をくすぐる。
そして。
「影の狙いは私だ。ご苦労。……………よく耐えてくれた」
聞き覚えのある、女の声。
影の体液と血を拭って開いた瞳に映ったのは…。
―――赤。
炎の赤とは異なる、上品で、高貴な、繊細な…………赤。
…………赤い……美しい装飾が施された…………ドレス。
……何故?と、呆気にとられていると、視界に映るドレスの脇に、鋭利な剣が現れた。
視線を上げていくと………そこには…。
「油断は禁物だ、師団長」
…姫がいた。