亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
「………これは…」
『…質問は無し。時間が無いんだよ。要点だけ話すから。………僕らは助けに行きたくても、この竜巻が邪魔して入れないんだ。それにあんたの剣は今こっちにある。………でも、剣を渡すことは出来る…』
「本当か……?……………!?」
………途端、正面にいる静止したイヨルゴスが、カタカタと震えだした。
………閉じていた口が、本の少しだけ動いた。
『………この化け物相手じゃ、もう保たないみたい。術が解ける。………………いい?とにかくそっちにあんた目掛けて剣をぶん投げるからね。ただ………こちとら時間がかかるし、いつ送れるかも…やってみないと分からない。…間違っても掴み損ねたり、刺されに行ったりしないでね』
………グラリと闇が歪んだ。
イヨルゴスの指が少しずつ動き始めた。
薄く開いた口の端から、唾液がべチャッと音を立てて落ちた。
………空間自体が揺れている。イヨルゴスの力の前では、さすがのダリルの術でもこの数十秒が限界の様だった。
『………それまで、耐えてね。じゃあ頑張って。………………………………隊長があんたを探してるよ』
最後の少年の呟きに、キーツは少し面食らった。
「―――え…!?隊長って………君らの………………………まさか…!?…俺を探して………」
―――ブンッ。
急に視界が元の景色に戻ったかと思うと…。
………目の前にイヨルゴスの巨大な口があった。