亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
……好機かもしれない。

キーツは足元を這い回るパラサイトの枝を飛び越えながら、徐々に距離をとっていった。

刺さった枝を引き千切り、咆哮する怪物の顔面に細い蔦が絡み付く。開いた口の側で、赤い蔓から小さな蕾が伸び、あっという間に黒い花を開化させた。

……金色の花粉が舞い散る。
そのほとんどが、この場を囲む竜巻の風に流されて持っていかれるが、難を逃れた花粉は怪物の口内やさらけ出された眼球に付着し、………その巨体の全身を痙攣させた。

………キーツは低く屈み、服の袖で口と鼻を覆って極力吸い込まない様にした。
毒性の強いパラサイトの花粉は、どんな生き物でも痺れさせる効果を持つが、吸い過ぎると死に至る。




呻き声までもが痺れて途切れ途切れになってきたイヨルゴスに、枝は容赦無く刺さる。

怪物の右肩に、集中的に何本も深く刺さり、貫き、骨を砕き………次の瞬間、イヨルゴスの右腕が、肩からブチリともがれた。




『――オ゙………ア゙ア゙ア゙アアアアアアア――!!』


イヨルゴスは悲鳴をあげた。腰から下を自ら千切った時の様に、上下の歯を食いしばり、ブルブルと震えて。






もがれた右腕は、力無く地面に落ちた。

地響きと共に舞い散る砂埃と、肉片と、青黒い血液。

本体から切り離されてしまった青白い腕は、ピクピクと震えていた。その腕に、地中から伸びた細い枝が蛆の様に群がっていく。



血走ったイヨルゴスの目玉は四方八方にギョロギョロと動き回り……………ピタリと、キーツに焦点を合わせた。



………キーツは身構えた。


パラサイトの花粉でまともに動けない身体を無理矢理起こし……こちらに突っ込んで来る体勢に入った。
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