亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
………ローアンを抱き締めていたキーツの腕が…………ブラリと、脇に垂れた。
「………キーツ…!?…………………キーツ………嫌………嫌…!………ねぇ……置いて…行かないで…………」
………。
………ああ。
……死ぬのかな。
………………変だな。………目を閉じると……………………母上が見えた。
………懐かしいな。
…………俺も、もう…………限界か。
……死にたくない。
「………貴方がいないなんて嫌………嫌だ………何処にも行かないで………!!………何処にも…行か……ない…で………!」
キーツは、重い瞼を閉じた。
「…………………ローアン………泣いたら駄目だ…………。………………君は…………………この国の………王だ。……………王は…こんな所で………泣いては駄目……だ」
「………王なんて……どうでもいい!!…………貴方を守れない私が…………王になんて……なれっこない!………私には…とても…………無理…」
「………ローアン………守れなくても……良いんだ………」
これから、出来ることをやっていけばいい。
可能性を見つけていけばいい。
成すべきことを、探していけばいい。
それには………今を歩かなければならない。
過去を、絶たなければならない。
「………俺はいい。……俺のことはいい。……早く…玉座につくんだ…」