亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
「―――……結婚……………を…………申し………入れま………す………………ローアン……」
………ローアンは、嗚咽を漏らすまいと固く口を閉じ………耐えていた。
……彼の言葉は……嬉しくて………でも悲しくて………悲し過ぎて………。
「……………もう………日が変わっていたな……………………………ハハッ………………………君の………16の誕生日に………ちゃんと………………………………言いたかった……のに……な………」
途切れ途切れの声は弱々しく、時々小さく咳き込んだ。
ローアンは泣きたいのを堪えながら………涙で汚れ、赤らんだ顔を、キーツの胸に埋めた。
「―――…………は…い………………」
………くぐもった彼女の声。
自分のために泣いてくれて…肩を震わせて…でも泣くまいと我慢していて……。
とても…………愛しい。
あの頃の様に、抱き締めたまま………彼女に何度も……使い古された愛の言葉を囁いた。
好きだ。
好きだよ。
愛している。
本当に。
ずっと。
…これからも。
………目頭が熱い。
…俺まで……泣いてしまいそうだ。