亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
















泣いて。












泣いて。



















声が掠れて。





















潰れてしまうくらい。























このまま、死んでしまいたいくらい。

























………冷たい。












………あんなに……暖かかったのに。























…………………冷…たい………。

























………真っ白な息を吐いて、澄み渡った空を見上げて。











また一粒、温い涙を落として。


















無言で佇む、純白の城を見詰めて。

















たくさんの、志のある者達の視線を受けながら。























………何かを、得るならば………犠牲が。










………犠牲が……。







………それでも私は。










進むしかないのか。
















………多くの命を糧にしていることを、忘れずに。


忘れては、ならない。
犠牲にしても、捨てはしない。
捨てるものか。


全部……全部……抱えて。














「………」

……冷たい彼の頬に触れて、日に照らされたブラウンの髪を撫でて。




……肩を震わせながら、何度も、何度も。
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