亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
赤い大樹は成長を止め、広大な荒野を覆う程、広く、高く枝を伸ばし………真っ黒な花を咲かせて、散らせていた。
赤土の大地が、黒と白で染まっていく。
おびただしい量の血と、突き刺ささっている刃と、もの言わぬ屍の群を………覆っていく。
私の視界から、隠していく。
……積もる花びらと雪を払い、横たわる彼にもう一度だけ触れて………。
………まるで眠っているみたいな、安らかな彼に………………ローアンは微笑んだ。
「―――………………………行ってきます……」
名残惜しそうに指は離れて。
ローアンは、ゆっくりと立ち上がった。
朝日を背に。
輝く無言の城を見上げて。
「―――聞け…」
凛とした、真直ぐな声が……静寂漂う戦場に響き渡った。
彼女に注がれる視線には、もはや敵味方の区別は無い。
「―――………私は………私は……王となる。…………しかし、私ではいけないのならば………私では許せないのであれば…………………構わん。………今ここで、切り捨てよ。………………その代わりだ…」