亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~


――――敵兵が来る。
多数の足音が、こちらに向かって来ていた。
まずい。ここで見つかっては……。


“闇溶け”は可能だが、この明るさだ。姿を上手く隠せないかもしれない。

……トゥラの分身に溶けこむしかない。しかしそれではトゥラが危険に………。


「………隊長!」

はぐれていた部下達がなんとかトウェインを見つけ、合流した。
炎の壁の側で、なるべく敵に見つからない様に身を屈める。

「…どうするの隊長…?……援護が無いから、そう簡単に侵入出来ないよ…」

「……本当に“闇溶け”を封じられるなんてね……こうなったら、隊長のトゥラが頼りだよ」

盲目である筈のダリルは、トウェインの隣にいるトゥラに顔を向けた。

「……でも…この状況だとトゥラが…」

真っ先に標的となるだろう。

トゥラの出す分身は、トゥラの後を付いて行く。先頭を走らない限り、分身は動かない。

……ワイオーンも放たれているのだ。…トゥラ一匹で敵の集団を掻い潜ることなど…。


黙りこくるトウェイン。………しかし、その沈黙は破られた。

「……トゥラ?」

迷いなどない。そう言っているかの様に、トゥラは主人の背中を鼻先で押した。

< 120 / 1,150 >

この作品をシェア

pagetop