亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
トゥラは一歩後退し、“闇溶け”で空気中から闇を集め始めた。

真っ黒な闇が、トゥラの後に流れて行く。
闇は四つに分かれ、トゥラと同じ姿に変わった。

……分身だ。

………これに溶けこめということか。


「―――…分かった、トゥラ。………お前は本当に…良い子だ」


ここまで忠実だと、罪悪感を感じる。
………お前は人殺しの道具として飼われているのに………。


トウェインは部下三人に向き直り、小声で言った。

「………今からトゥラの分身に溶けこみ、敵の本拠地である城壁内に侵入する。………城壁前までトゥラが分身を導くから、分身が消えるのと同時に闇に紛れて城壁を抜けろ。………気合いを入れて行け!」

三人は黙って敬礼をした。



次の瞬間、四人の姿は一斉に黒煙と化し、空気中に消えた。

見えないだけで、四人はトゥラの分身に溶け込んでいた。

それを確認したトゥラは、火の囲いに沿って丘へ走った。

分身も同じ様に、トゥラに続いて駆けて行く。

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