亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
ずっと怒っていて……どうしたんだろう?
赤い体毛は逆立って小刻みに震えている。
そして何故か、怒りの矛先は自分に向いている。
………嫌な奴。
取り敢えず無視しておこうと思った。
………この赤い生き物は急に走って来た。
目が血走ってる。
「………こりゃ駄目だな……フェーラの方は戦意がまるで無い」
「……仕方無ぇ………ま、犬の方は明日までの命なんだ。最後の晩餐ってことにしておこうぜ」
真っ赤な生き物が、真っ赤な口開けて突っ込んできた。
………こっちに来るな。
…嫌気がさす…!
ガッ………と噛まれるか噛まれないかの直前で、こいつの頭を両手で鷲掴みした。
メリッ、と変な音が頭から聞こえる。
首を傾げながら、この生き物をじろじろと観察した。
………怖がってる?なんで?………意味分かんない。
………不味そうだから、要らない。
こいつの大きな耳に顔を寄せて、口を開けた。
小刻みに、小さく喉を鳴らし、虫の羽音の様な声で囁いた。
『―――……ハ…ガ……ルゥゥ……』
―――パンッ……。
小気味良い音がしたかと思うと、真っ赤な血飛沫が舞った。