亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
「―――…」
「―――…」
「―――……魔術だ」
「―――凄え!!」
舐めて綺麗にしたのにまた汚れてしまった身体を丹念に舐め回す。………周りがえらく騒々しい。
「使える!!魔術が出来るなんて……凄い確率だ!しかもまだ子供だってのに…!」
「魔の者とは違ってシンプルな魔術だな………直接呪文を浴びせるのか…」
それからというもの、毎日森に連れて行かれた。
大きな生き物を見つけたら、殺して持ち帰る。たまに殺さずにそのまま。
生き物なら何でも良いという訳ではないようで、分からなくなる。
言う通りにしたら、おいしい肉をくれた。
逃がしてしまったり、間違えて殺してしまった時は、お預けだ。たまに叩かれる。顎を蹴られて歯が飛んだこともしばしば。
でもどうせ生えてくるから、気にしなかった。
真っ黒な髪の奴がいつも肉をくれた。
酒とかいうのを飲んでいる時、奴は髪を引っ張ったり薄い尖った棒を振り回してくる。
でもたまに撫でてくれた。
そうされるのが嬉しくて、毎日毎日、いろんなのを殺した。
いつからか、こいつは自分を「イブ」と呼んでくるようになった。