亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~

あの後、アベレットに散々殴られた。
暖炉の灰を被せられ、傷口に熱湯を掛けられ、また蹴られて、指を折られて……。













………なんだか、人間が分からなくなってきた。
















人間を殺す回数は徐々に増えていった。




荷車を引いた老人を殺したり、何処からか避難して来た集団を皆、殺した。

山賊のいる所に人間に化けて行ったりした。
強引に住家に連れて行かれた後、一気に殺した。





アベレット達は、殺した人間からいろんなものを取っていた。光る石、お金、衣服…。

若い女性の死体を引き摺って持って帰るのもいた。









食べる訳でも無く、身を守る訳でも無く………見つけたら殺す。

全部あたし。






血生臭い中に佇むのはあたし。









得る物は何も無い。










最近、アベレットは撫でてくれなくなってきた。



―――なんとなく、嫌いになってきた。



いつもの檻の中。






すぐ隣りで、強引に連れて来た人間の女に覆い被さり、獣の様に激しく動くアベレット。

女性は泣いている。















残忍な獣と変わらなかった。

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