亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
また、一年経った。
身体の大きさは相変わらずだが、一応6歳になっていた。
暑い暑い日だった。
廃墟同然の街を、見たことも無い人間がたくさん囲んでいた。
皆真っ黒。いや…灰色。
黒い大きな犬がうろうろしている。
太陽の光が眩しそうだ。
中央の家屋に、アベレット達は集まって隠れていた。全員、なんだか落ち着かない様子でびくびくしている。
アベレットは本日何本目になるか分からない煙草を咥えていた。
手元が震えて火が付かないらしい。
「………最悪だな……あの軍服は……反逆側のアレスの使者だ……昨日の情報ではまだあと三日はかかる距離だったってのに……どういう軍隊だ…」
「………去年から戦争が続いているからな………連中、隙が無いぜ………あちこちの街や村を占拠してるらしいぜ……」
アレスの使者…?
……意味分かんない。
隙間から顔を出し、囲んでいる人間達を眺めた。
耳を澄ませると、奥から話声が聞こえた。
「―――グラッゾ隊長、どう致しますか?この分ですと……。………攻め込みますか?」
剣を携えた男が、腕を組んで考え込んでいた。
茶色い髪の、やや老けた男だ。片目は潰れている。