亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
風に靡く前髪を押さえ、キーツは膝に置いた古い『大国の歴史』の頁を睨む。


「………燐国のバリアンは、我が国とどう違いがある?単に砂漠の国という環境の違いだけではないのだろう?」

普通の七歳児が言う台詞ではない。
それを至極当然の様に、アレクセイはやんわりと受け止めた。

「……ええ。勿論で御座います。バリアンは昔から軍事国家。国民の声明も決して平和的思考ではありません。また、文化も異なりますな。言語は三大国共通ですが、バリアンは文法がちと堅苦しい構造ですな」


淡々と説明するアレクセイの話を、一言一句聞き逃さない様に、真剣に耳を傾けていた。

「………では、デイファレトは…」

「―――キーツ」

出そうになっていた言葉を飲み込んだ。

向かいに座る、寡黙な父。


キーツは本を閉じ、アレクセイの手元に投げた。




「………勉強熱心なのは良いことだ。だが……場所を考えよ。……父の前で知識不足の己を見せつけたいのか、キーツ…」


父は、厳しい人だ。

しかし、キーツはそんな父が好きだ。

キーツが二歳の時に母が亡くなってから、父は構ってくれるようになった。



父も寂しかったのかもしれない。




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