亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
車はどんどん森の奥へ突き進んで行った。
フェンネル国の国土の5割を占めるこの森。
『沈黙の森』というらしいが………実に広大で、深く、谷側は陽光が届かないという。
おまけに、非常に複雑で強力な磁場が出ているため、磁石も役に立たない。
城へと通じる、整備されたこの道だけが、唯一の救いなのだ。
「………切り開いてしまえば良いのに」
「……この森は昔、魔の者達が作ったものだそうです。外の敵から城を守る自然の城壁で御座います」
アレクセイはさらりと述べた。
森の奥。奥。奥。
………城は相当田舎にあるのか?
谷の麓の街の方が華やかで、学者や貴族、血の気の多い学生がうろうろしているが……。
この辺りはどうだ。
魔物や妖獣、山賊がうろうろしているのでは…。
そんなことを考えていると、急に車は明るい空間に出た。
森を出たのだ。
その瞬間、外に見えたのは………壁だった。
何処もかしこも巨大な壁………いや、塔だ。石造りの古い、真っ白な塔が、密林の様に平地に生えている。
車は塔の群れの中を進んだ。キーツは好奇心を露にして窓から顔を出した。
………ぐいっとアレクセイに襟を掴まれて戻された。