亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
女王が父にどんな用件で呼び出したのかは知らないが、とにかくキーツにとって、この待ち時間は暇だった。
ちょっとした遊戯でチェスやらトランプならあったが、アレクセイ相手だとものの五分で負けてしまう。
この男、結構な策士であるし、元々国家騎士団に所属していた経歴があるから、剣をもたせりゃべらぼうに強い。
というか、七歳相手に容赦無しですか?
アレクセイが外を眺めながら、「いやぁ、今年は豊作になりそうな気候が続いてますなぁ」とか言っている隙に、キーツは部屋から抜け出した。
一歩外に出ると、騎士団の兵士達がやはり銅像の如く立っていた。
その前を素通りし、城の裏へ回った。
室内より外の方がよっぽど良い。
気持ち良い風が丘に吹いていた。
陽光が眩しい。
城はずっと奥まで続いていて、歩いても歩いても同じ城壁があった。
そうやってしばらく進んでいると、小さな森が見えてきた。
丘の上に森があるとは…。
まるで庭の様だ。
キーツはその森に入ってみたいという好奇心に駆られた。
そんな森の手前に、小さな白い大地が広がっていた。
花畑だった。