亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
そんな小さな村に、マリア=クローデルは生まれた。
待望の男の子が欲しかった父は、第一子が女の子と分かって、それはもう落胆したらしい。
その翌年も母は子を生んだが、これも女の子。そしてその二年後に、やっと男の子が生まれた。
父は末っ子の男の子ばかりを可愛がり、あとの二人は母に任せっきりの状態であった。
父は弟に触れることさえ許してくれなかった。
まるで病気か何かが移るとでも言うくらい、父は弟を溺愛し、母や姉達に近付けなかった。
部屋や食事さえ扱いは違った。
ただでさえ小さく狭い家なのだが、一番広い部屋を弟に与え、父以外他は小さな部屋で揃って雑魚寝だった。
食事は、弟は栄養価の高いもの。
女は野菜の切れ端や皮で間に合わせた味の薄い……はっきり言ってちっとも美味しくないスープが主な食べ物だった。
自然、弟は父の熱教育で力仕事に向いている逞しい体付きになり、背もぐんぐん伸びた。
髪や目の色は父に、顔つきは母に似ていたため、村でもなかなか評判の良い美青年だった。
………ただ、性格の方はあまり良くなかった。
傲慢で偉そうな父が手塩をかけて育てたのだ。
その辺が父と似ているし、とても我が儘だった。