亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
三つ年下のこの弟は、姉さんと呼んでくれたことがない。
それは幼い頃からの隔離された生活環境故の結果だが、彼は二人の姉を肉親というより住み込みの世話係りか何かと認識しているらしい。
朝から晩まで、この我が儘な王子様の面倒を見なければならなかった。
朝はまず、この弟の声で始まると言ってもいい。
なんとも退屈で、ストレスの堪る一日の始まり。
「何処にいるんだよ!おいマリア!」
成人したばかりの15の弟が、家の中で偉そうに叫んでいた。
花摘みを終えて帰って来ていたマリア達は、その声を少し離れた丘の上から耳にしていた。
「あら……今日は少し早いお目覚めね。ごめんなさい母さん、私の分も一緒に持って帰ってちょうだい。これを持って走れないわ」
「………ええ、行っておいで」
マリアは母に花の山を手渡し、長いスカートの裾を摘まんで走った。
後ろに結った長い髪が左右に揺れる。
家からは、寝起きの悪い弟の怒鳴り散らす声が漏れていた。
息を切らして中に入ると、毛布を蹴りたくり、明らかに不機嫌そうな弟が眉をひそめてベッドに座っていた。
………朝食が置かれていないことに腹を立てているのだろう。